日常的になじみのあるお菓子や乳製品にとどまらず、粉ミルクから健康食品、流動食・介護食に至るまで、幅広い食品の製造・販売を通して、長い間お客様に「おいしさ・楽しさ・健康・安心」を提供している企業です。
明治とTCAがコラボレートして開催されるロングラン企業プロジェクト。その特徴は、デザインだけでなく商品の中身から学生が考えるユニークな課題にあります。そこに込められた、学生の成長を促す狙いとは?
●TCAとの17年間の企業プロジェクトを振り返って、得られた成果など総評をお聞かせいただけますか?
本間もう、そんなになりますか(笑)。長く続いていますね。プロジェクトの企業側にとってのメリットは、ふだん自分たちがしている仕事の内容を、人に教える作業を通じてあらためて体系的に整理できることです。私だけでなく、斎藤さんたちを巻き込んだことによって、彼らもそれができるようになりました。会社の中で、商品を体系立てて語れるようになるんです。
篠塚明治の企業プロジェクトでは、お菓子やアイスクリーム、ヨーグルト、牛乳など、身近な商品が課題になります。学生たちが身近に感じられる課題だったことが、これだけ長く続いてきた要因だと思いますよ。商品そのものの企画やネーミングから考えていく楽しさと、パッケージを緻密にデザインするフィニッシュの作業。そこで得られる本格的で実践的な学びは、このプロジェクトならではといえます。
本間最後まで、かなり学生たちを追い込んでいきますからね(笑)。
●篠塚先生がおっしゃる通り、このプロジェクトの大きな特徴は商品開発から学生に取り組ませることだと思いますが、そこにはどのような狙いがあるのでしょうか?
本間私が思うに、クリエーティブとは「ロジックと感性」です。もしかするとクリエーティブだけでなく、すべての仕事がそうかもしれませんね。学生たちには「なぜこの商品が良いのか?このサービスが優れているのか?」といったことを、論理的にも考えられるようになってほしいんです。
斎藤TCAの卒業生は、みんなクリエーティブな仕事に就いていきますよね?その仕事の本質は「より多くのお客さまに、より大きな喜びを届けること」だと思います。山奥にこもって轆轤を回すような、芸術家の仕事でない限りはね。だからこそ、就職先がメーカーであれデザイン会社であれ、お客さまが何を望んでいるかを考えることこそが最も大事な仕事なんです。学生たちに商品から企画してもらう狙いは、そこにあります。
●プロのデザイナーでも、商品の中身から企画させてもらえる機会はそう多くないと思います。篠塚先生は、この課題を通じて学生たちにどんなスキルを身につけてほしいと考えられますか?
篠塚単に絵を作る、デザインをするだけが、デザイナーの仕事ではありません。対象となる商品の価値をしっかりと理解してデザインするからこそ、プロのクリエーションになるのです。そうしたスキルを鍛えることは「即戦力の人材を育てる」というTCAのポリシーにも合致しています。
●本間さんには、新しくTCAの教育顧問にご就任いただきました。「これからこんなクリエーターを育成していきたい」というビジョンがありましたら、ぜひお聞かせください。
本間いまの世の中は、すべてにおいて利益中心主義ですよね。世界中がそれに従って動いている。そんな中で、クリエーターも「いかに利益を生み出せるか」という価値観のもとに、ガチガチに型にハメられている気がするんです。私は、それじゃいけないと思うんですよね。それだと、クリエーターになかなか良い発想が生まれなくなりますから。だからこそ、つまらない型に打ち勝っていくクリエーターを育てていきたいと思います。きっとそんな人たちが、この日本の閉塞感を破ってくれると思うので。
●さて、今回対象となる商品は「スーパーカップ」です。プロジェクト課題の概要を解説いただけますか?
斎藤魅力的なカップアイスの新商品を考えてもらいます。お客様ニーズの発見とターゲット設定、そのニーズに応える商品・ネーミング・キャッチコピーの開発までがフェーズ1、そして顧客に高い訴求力を持つパッケージデザインの作成がフェーズ2となります。
●学生たちには、どんな提案を期待されますか?
斎藤世の中に既にある、参考になる商品をなぞって作るような寂しい提案にはしてほしくないです。「まだ出会ったことがないけど、こんなアイスがあったらいいな」という自由な発想から生まれる商品をぜひ企画してください。社会に出ると、どうしても企業の型にはまってイノベーティブな提案ができにくくなります。自由な学生のいましかできない、私たちを驚かせる提案を期待しています。
本間そうですね。先ほど「ロジックが大事だ」と言いましたが、いちばん欲しいのはどこかがすごく尖っている企画です。自分の主観的なほとばしる情熱が普遍的なものになった時こそ、大ヒット商品は生まれますから。現実性より、思い切ったアイデアを考えてください。
篠塚本当にその通りで、やる以上はとことんやってほしい。もちろん企画の前提条件や制約を無視してはいけないけど、その中でとことんやり切ることを楽しいと思えるようになれば、クリエーターとして大きく成長します。
斎藤こういうことを言うとプレッシャーになるかもしれませんが、われわれプロは2~3日でやった「やっつけ仕事」はすぐに見破りますからね(笑)。
●そんなプレッシャーを受けて、学生たちはどうですか(笑)?
K「自由な発想」で、大人たちの堅い考えを打ち負かすことができるか?そこを考えるのは、すごく楽しいです。制約が多すぎると、企業を驚かせることはできないですからね。私は特にキャッチコピーを考えるのが好きなので、見た人に3秒で「なるほど!」と思わせるような強いフレーズも作りたいと思います。
椎葉:ここまで自由な企業課題は、私は初めてかもしれません。嬉しいですね。ワクワクしてきました!
斎藤それは頼もしい。頑張ってください!
今回行われるのは、TCA姉妹校の学生たちも参加してコンペ形式でアイデアを競う「全国プロジェクト」。果たしてそこで、どんな魅力的な企画が生まれるのか?プランニングに向かう学生たちの意気込みをお聞きください。
姉妹校からどんな企画が出てくるか楽しみです。私は「さすが東京だ!」と思わせる企画で勝ちあがりたいですね。
自由だから、頭をフニャフニャにして考えられるのが楽しみです!自分のコンビニバイトの経験も活かしていけたら。