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スペシャルトークセッション

ワントゥーテン×TCA

Profile

教育顧問 クリエイティブディレクター
入江洋平先生

(株)マッキャンエリクソン・クリエイティブディレクター、(株)グレイワールドワイド・チーフクリエイティブオフィサーを経て、現在(株)propeller・代表取締役。これまでに日本政府観光局、日本コカコーラ、ネスレジャパン、マイクロソフト、MasterCard、味の素、東京ディズニーランドなど、数々の広告コミュニケーションのクリエイティブディレクションを手掛ける。日本広告業協会クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞、ACC賞ブロンズ。カンヌライオンズ/OneShow/クリオ/IBA/ニューヨークフェスティバル/ロンドン国際広告/アドフェストなど海外広告コンクールでの受賞多数。

教育顧問/株式会社ワントゥーテン
本部長・執行役員
薄井大輔先生

1998年TCA卒業。ポストプロダクション、雑誌編集プロダクション、Webプロダクションにてディレクター、プランナー、取締役を経験。現在は株式会社ワントゥーテンに在籍し本部長・執行役員を務める。グッドデザイン賞、BtoB広告賞、ADSTARS、EventMarketingAwardsなどを受賞。

SPECIAL TALK SESSION

自分の「好き」と向き合い、それを社会や他人にどう伝えるかを考え続ける

「好きと仕事」をどうつなげるの?クリエイティブ業界で、新しい価値観で世の中に影響を与えるプロジェクトを
次々と生み出してきた入江教育顧問と薄井教育顧問に、クリエイティブ業界の今、そしてこれからについて語ってもらいました。

教育顧問
クリエイティブディレクター

入江洋平先生

教育顧問/株式会社ワントゥーテン
本部長・執行役員

薄井大輔先生

VFX・CG・
映像マスターコース3年

Yさん

VFX・CG・
映像マスターコース3年

Tさん

VFX・CG・
映像マスターコース3年

Wさん

情報過多の時代における
「好き」の探し方

おふたりが初めて出会ったきっかけについて教えていただけますか?

入江僕たちが出会ったのは、日本政府観光局の大規模なインバウンド向けプロジェクトでした。僕は広告施策のクリエイティブディレクターを務め、薄井さんはネット施策のプロデュースを担当されていました。

薄井このキャンペーンでは、ユーザーが質問に答えると、それに基づいた30秒の動画が生成される仕組みを作りました。当時、アルゴリズムを使った動画生成は珍しく、何十万通りもの動画を作る挑戦的なプロジェクトでしたが、結果は上々で、日本の魅力を多くの人に届けられたと思います。

入江その後Facebookでつながり薄井さんがTCA卒業生だと知り、今の関係につながっています。

クリエイティブ業界でのキャリアをスタートした頃、学生時代とのギャップや「好きを仕事にする」というテーマについてどう感じていましたか?

入江僕の場合、高校時代からやりたいことが比較的はっきりしていました。高校では文化祭の企画やポスター制作、校内ラジオCMなどに夢中になり、それがそのまま美大への進学、広告業界への就職につながりました。幸い、迷いが少なく「好きなことをそのまま仕事にしている」と思えたんです。でも、それが必ずしも楽ではないと気づくのは入社してからでした。クライアントのニーズに応える中で、自分の表現が削られることもあります。でも、そういったプロセスの中で「好き」をどう活かしていくかを学びましたね。

薄井私の場合は、TCA卒業後にインターンでお世話になった映像会社からキャリアが始まりましたが、途中で方向転換をしています。最初の会社では映画や体験型施設の映像企画・制作にアシスタントとして携わり、その後は雑誌の編集部、さらにWeb制作プロダクションのディレクターに転向しました。映像から離れてしまったこと自体がギャップとも言えますが、振り返ると「表現」という軸は常に共通していて、好きなことが形を変えながらも自分の中に残り続けているという感覚でした。

現在のクリエイティブ業界は、SNSの普及や情報の細分化により、「好き」を見つけるのが難しいと感じる人も多いように思います。お二人はその点についてどうお考えですか?

入江確かに僕らが若かった頃に比べて、今は情報があふれていますよね。当時はみんなが共通して憧れる「かっこいいもの」や「おしゃれなもの」が見えやすかったんです。でも、SNSが普及してからはアルゴリズムが個人に合った情報を提供するので、「これが好き」と確信を持つのが難しくなっている気がします。

薄井今は誰でも簡単に創作活動を始められる環境が整っています。便利ではありますが、逆に「本当に好きなもの」を見極めるのが難しい時代だと思います。その中で重要なのは、単に表面的な「好き」ではなく、それがどう社会や他人に影響を与えるかを考えることだと思います。自分の「好き」を掘り下げていくことで、情熱に変えられるのではないかと。

授業を通して学んで欲しいことはなんですか?

薄井私が大切にしているのは、挫折したときにどうするかということです。成功の手段は多くの講師陣から学べると思いますので、私は卒業生として、挫折や時代の変化を乗り越える力を特別授業で伝えています。技術を持っていても、それが時代や環境に合わなくなることがあります。そのとき、自分に何が残るのかを常に考えてほしいんです。物を作る力以上に、問題をどう考察し、提起できるのか、人間力というか、本質的なクリエイティビティを磨いてもらいたいです。

成功の手段は多くの講師陣から学べる

最後に、これからのクリエイティブ業界で大切にしていきたいことを教えてください。

薄井自分の「好き」が何かを問い続けながら、これまで転職を繰り返してきました。人生の中で、自分のスキルが何で、それがどうお金になるかを冷静に考えるタイミングって意外と何度かあるんです。例えば、熱帯魚が好きで店員になってもいいなと思ったこともありますし、バイクが趣味だったのでバイク屋の店員も楽しそうだなと感じたこともありました。そんな中で、「自分が本当に好きなことは何か」を考え抜いた結果が今の道です。でも、この道以外を選んだからって駄目だというわけではありません。好きなことを突き詰めることで、結果的に豊かになったり、影響力を持てたりする可能性もあります。小さな「好き」でも、それに没頭できるならそこから未来が広がるかもしれない。だからこそ、自分の「好き」と向き合い、それをどう社会や他人に伝えるかを考え続けたいですね。ぜひみなさんも、時代や技術に左右されない「好き」を軸に挑戦を続けてもらいたいと思います。

入江時代が進むにつれて、クリエイティブの役割も変化しています。これからは、単なる作品制作ではなく、社会課題の解決や新しい価値の創出に貢献する力が求められると思います。単なる「かっこいいデザイン」ではなく、新しい価値を与え、社会や経済を動かす力が重要になっています。時代はアウトプットを追求する職人的なクリエイター像から大きく変わってきています。個人の「好き」を仕事に生かすためには、広い視野と柔軟な発想を持つことが大切です。