アニメ監督はアニメーション制作におけるすべての決定権を持つ、作品の総責任者です。スタッフ、ストーリー(シナリオ)、キャラクター、動画、配色、CG、背景、声優、音楽など、ひとつのアニメーション作品が生まれるまでには、たくさんのことを決めて制作を進めていく必要があります。そのひとつひとつの決定に監督は参加し、判断を下していきます。
規模の大きな作品や監督の作業負担を減らしたいときには、作画監督や美術監督、音響監督といったポストを設けて、その分野のプロフェッショナルにある程度、裁量権を与えて品質の管理や演出を依頼することもあります。その場合も、どのような作品を目指すのか、事前に各監督とコミュニケーションを密に取り、イメージに齟齬(そご)が出ないよう進めていきます。
監督の主な勤務先は、アニメーション制作会社や映像制作会社、映画会社などになります。監督作品を何本か手がけたのち、自身で個人事務所や制作会社を設立するケースも見られます。
監督はシナリオ、作画から音楽まで非常に幅広い作業の指揮を取ります。そのため作画経験や助監督・アシスタントでの演出経験、あるいはアニメーション全般に対する関心や知識、さらにはアートや映画、撮影や音楽の知識など、さまざまな能力が必要とされます。また制作スケジュールが遅れてしまうこともあるため、優秀なスタッフを集めて、効率的に仕事を進めてもらうマネジメント力も問われます。
アニメーション作品は日本国内だけにとどまらず、世界からも注目を浴びている分野のため、非常にやりがいの高い仕事だと言えます。まずはアニメーション制作会社へ就職し、作画経験を積みながら監督を目指していきましょう。
続いて、監督の仕事内容を見ていきましょう。どのような手順で仕事をしていくのか、依頼から完了までの流れを簡単に解説していきます。
アニメーション作品を制作するためには、まず企画を通すことが必要です。プロデューサーから企画が持ち込まれることもあれば、監督自らがプロデューサーとなって、各映画会社やテレビ局、映像ソフト会社に企画を持ち込むこともあります。
無事に企画が通ったら、資金集めはプロデューサーに任せ、制作スタッフを集めていきます。優秀なスタッフほど仕事が立て込んでいるため、スケジュールを調整したり、彼らを口説き落としたりする力も監督の手腕だと言えます。
まだシナリオが完成していないなら、脚本家やシナリオライターに依頼します。監督自らが脚本を書く場合もあります。そのほかキャラクターの決定や背景など、アニメの骨格となる部分から作業を進めていきます。
原画や背景などが完成したら、作画を経て順次動画の撮影に進んでいきます。視覚効果に関しても、どのような演出をしてほしいのかを担当者に伝え、作業を進めてもらいます。
アニメーションが完成したら、効果音やセリフを録音していきます。監督は声優の人選行ったり、録音現場を訪れて声のだし方を指導したりすることもあります。
すべての作業にめどがついたら、より作品がヒットするため、取材を受けたり、宣伝活動を積極的に行ったりしていきます。
どのような仕事にも、その職業に関わる人たちがよく使う専門用語があります。ここでは、監督が使う業界用語を取り上げます。
本格的な制作がスタートする前に、作品のイメージが関係者にも伝わるようサンプルとなるビジュアルを制作します。これをイメージボードと呼び、絵のタッチや配色を決める際の基準になることもあります。
完成したシナリオを元に、カット割りやカメラワークを決めるために絵コンテと呼ばれる設計図を作ります。監督の重要な仕事のひとつです。