テレビで見かけるアニメやCMのキャラクターが話す声は、声優によって吹き込まれたものです。声優は字のとおり、声を使い、声で役を演じる職業です。声優と聞くと主にアニメをイメージする人も多いと思いますが、活動の場は広く、ゲームのキャラクターの声やラジオドラマのキャスト、テレビ番組のナレーターなども声優の仕事です。
プロの声優として活動するためには、専門学校や声優養成所でスキル身につけなければいけません。具体的には腹式呼吸や発声練習、演技力や歌唱力を磨くレッスンなどで実力をつけます。そのあと、声優事務所が主催するオーディションに合格できれば、プロの声優としての第一歩が踏み出せます。
しかし、活動拠点となる所属事務所が決まっても、最初は準所属・ジュニアといった正式な所属声優と見なされない場合がほとんどです。まずは、事務所のマネージャーに顔と名前を知ってもらえるように売り込みをしたり、アニメ制作会社のオーディションに積極的に応募したりする努力が必要です。このように、名前が売れるまでは声優を専業とするのが難しいため、アルバイトと兼業をしている人が多い職種でもあります。
続いて、声優の仕事内容を見ていきましょう。どのような手順で仕事をしていくのか、プロダクションに所属している声優さんを例に解説していきます。
アニメやラジオドラマ、ゲームのキャラクターボイスなど、さまざまなジャンルで声優のオーディションが行われています。ほとんどのオーディションに書類選考があるので、書類の準備をします。用意するのはオーディション専用の履歴書で、全身写真と半身写真を添付します。添付する写真は重要なので、オーディション写真専用のスタジオで撮影します。
書類以外に、ボイスサンプルも必要です。キャラクターに合った声質かどうか、声が安定しているかを判断する材料になります。ボイスサンプルの長さは2~3分くらいです。構成は自己紹介から始まり、ナレーションやセリフ、フリートークといった、さまざまな状況を想定したパターンで録音をします。録音は自分で行わず、録音スタジオで制作したものを準備します。
履歴書とボイスサンプルを添えてオーディションに応募したら、オーディション当日に備えます。オーディション会場に入ったらベストの声が出せるように、のどを温めたり小さな声で喉のアイドリングをしたりと、万全の状況で挑みます。
オーディションの合格通知がきたら、仕事がスタートします。プロダクションを通じて収録日の日程や場所、作品名などの連絡があり、台本が届いたら事務所まで台本を取りに行きます。オーディションがない端役の場合は、事務所からいきなり連絡が来ることもあるので、柔軟な対応力が必要です。
スタジオ入りする際は自分の所属先と名前、そして役柄名をはっきり聞こえるように伝えるとともに、一緒に仕事をするスタッフへのあいさつもしっかりします。収録後のお礼も欠かせません。笑顔でのあいさつは、次の仕事につながる営業アイテムでもあるので常に意識が必要です。
自分が携わった作品の公開時期と情報解禁日を把握することも大切です。情報解禁前にSNSやブログで出演作の情報を漏らしてしまうと、注意を受けるだけでなく今後仕事が来なくなる可能性もあります。放送までは守秘義務を守り、放送後はSNSやブログなどで宣伝して次の仕事につながるようアピールします。
どのような仕事にも、その職業に関わる人たちがよく使う専門用語があります。ここでは、声優が使う業界用語を取り上げます。
シーンによっては、画面の外にいるキャラクターがセリフをしゃべっていることがあります。これをオフゼリフといい、通常のセリフとの違いがひと目でわかるように、台本にはオフと記載されていることがあります。
慣れないうちはセリフをかんでしまい、うまくできないことがあります。また、マイクにぶつかってしまい雑音が収録されてしまうことがあります。録音は基本的に複数の声優が同時に行うため、あまりに失敗が多いとあとから一人で撮り直しをすることがあります。これをオンリー録りといいます。