DTPデザイナーは、書籍や雑誌、カタログなどのレイアウトデザインを主に担当する仕事です。
DTPとは、DeskTop Publishing(デスクトップパブリッシング)の略で、パソコン上で誌面のレイアウト作業を行うことを意味します。1986年にアメリカでページレイアウトソフト、PageMaker(ページメーカー)が発売されるにあたって、提唱された言葉です。それ以前は、文字の修正があるたびに写植という手法で文字を打ち直して、それを印画紙に出力し、版下と呼ばれる台紙に貼りつけることで修正を行っていました。同様に写真の位置を修正する場合にも、版下からやり直す必要があったわけです。
しかし、DTPが登場したことで、文字やレイアウトの変更がパソコン内で簡単にできるようになりました。これによって写植、版下、そして製版という雑誌や書籍を作る際に欠かせないプロセスが一本化され、印刷の工程が劇的に効率化されました。そして現在では、ほぼすべての書籍や雑誌がDTPによって制作されています。
DTPデザイナーは編集者から提供される設計図(ラフ)、原稿、イラストもしくは写真を使って、レイアウトデザインを行っていきます。このときまだ原稿がなく、ダミーの原稿を使ってレイアウトを組むこともあります。この場合、デザイナーが決めた文字数をもとにライターが原稿を仕上げていくことになります。主に使用されているレイアウトソフトが、アドビシステムズのAdobe InDesign(アドビインデザイン)です。2000年代半ばごろまでは、Quark社のQuarkXPress(クォーク・エクスプレス)というソフトウェアが業界のデファクトスタンダードでしたが、Mac OS Xへの対応が遅かったこともあり、現在ではAdobe InDesignが業界基準となっています。
続いて、DTPデザイナーの仕事内容を見ていきましょう。どのような手順で仕事をしていくのか、依頼から完了までの流れを簡単に解説していきます。
雑誌や書籍などでレイアウトデザインを行う際には、まずどのようなデザインにすればよいのか、編集者と打ち合わせを行います。企画のテーマや内容について話し、イラストを使ったページにするのか、それとも写真で構成するのか、あるいは両方使うのかといった方向性を検討していきます。
DTPデザイナーがレイアウトを作成するタイミングは、ページの特徴や雑誌のコンセプトによって少し異なります。一般的にはタイトルや写真、イラストなどのレイアウトを作るために必要な素材を、編集者から受け取ってから作業を開始しますが、凝ったビジュアルデザインのページを作りたいときには、先にダミーのイラストや写真素材を使ってレイアウトを作ることがあります。先割りと呼ばれる手法で、原稿の文字数や使用すべき写真の点数に縛られることなく、より自由にレイアウトすることができます。
ラフデザインが完成すると編集者からのフィードバックを受けます。意図していたデザインとなっているかを確認してもらい、修正点があれば修正を行い再度提出します。
デザインのOKがでて、原稿や本番用のイラストを配置したら、印刷所に入稿するための入稿データを作ります。印刷所では入稿したデータがきちんと印刷されるように細かなルールを決めています。そのルールにあわせたデータを作り印刷所に入稿します。
どのような仕事にもその職業に関わる人たちがよく使う専門用語があります。ここでは、DTPデザイナーの業界用語を取り上げます。
イラストを使ったページを作成する場合、レイアウトをするときにはイラストがまだ下書き段階のことがあります。締め切りに追われているような雑誌の場合には、一度この下書きイラストを使ってレイアウトを作ります。位置や大きさを決めるために下書きイラストは使われ、本番用のイラストが完成したらそこだけ差し替えます。このような下書きイラストをアタリと呼びます。
印刷所によっては、レイアウトデータを入稿する際にどのようなソフトを使ってレイアウトをしたのか、細かく書類に記入しなければいけないことがあります。きちんと印刷するためのトラブル防止策です。その書類が入稿シートです。